高気圧酸素治療

高気圧酸素治療(Hyperbaric oxygen therapy:HBO療法)

当院は高気圧酸素治療のパイオニアです

高気圧酸素タンク 外観1952年(昭和27年)、戦後多発した潜水病治療のため、日本で初めて当院に高気圧治療装置を設置しました。
その後、欧米やわが国の大学病院や民間病院に次々と本装置が設置され、潜水病の治療のほか一酸化炭素中毒、脳塞栓、突発性難聴や急性・慢性の末梢循環障害など種々の疾患に応用されるようになりました。近年ではスポーツ障害の回復にも注目されている治療法です。

治療の原理

空気呼吸時、肺胞に入った空気中の酸素は肺胞を取巻く毛細血管中の赤血球のヘモグロビンに結合します(結合型酸素)。また、一部は血漿中に溶解します(溶解型酸素)。そして、この2つの型の酸素が血流によって、体内の各組織に送られるのです。
しかし、結合型酸素は赤血球中のヘモグロビンに酸素が100%入ってしまうと、それ以上は増量しません(大気圧下、空気呼吸時の動脈血の酸素飽和度は97〜98%です)。
これに対し、溶解型酸素は気圧が上昇するにつれて、一定の法則に従って少しづつ増量してゆきます。大気圧下、空気呼吸時の動脈血酸素分圧が100mmHgであるのに対して、2気圧下、純酸素吸入時では1000mmHg以上へと大きく増やすことができます。この増量させた溶解型酸素によって、体内の低酸素症を改善しようとするのが高気圧酸素治療です。

治療装置

治療装置には2つの型があります。《当院は第二種治療装置》

第1種治療装置

(一人用の治療装置)。多くの場合純酸素で装置内を加圧します。

第2種治療装置

(多人数用の大型装置)。装置内は空気で加圧し、患者さんはマスクを通し酸素を吸入します。装置内の酸素濃度は25%以上にならないように調節してあるので、火災などの危険はありません。ただし、点火源となる物品(マッチ、ライター、カイロ類)を持ち込んではいけません。

高気圧酸素治療の実際

当院で行っている高気圧酸素治療の標準的パターンは右図のとおりです。
われわれが生活している地表は1.0ATA(絶対気圧)です。装置の中も始めは同じく1.0ATAです。 扉を閉めて、装置内の圧を15分かけて2.0ATAにします。そして、2.0ATAで60分間治療します。 その後、15分かけて装置内圧を1.0ATAに戻します。
以上で1回の治療は終了となります。全体の所要時間は90分です。

治療中の様子

                          リクライニングチェアにお掛けいただき、リラックスして治療が受けられます。

治療について(初めて治療を開始される方はお電話で問合わせいただけますとスムーズです。)

  • 健康保険で治療を受けられる病気は下記の表を参照下さい。
    他医療機関からのご紹介も承ります。(紹介状をお持ち下さるようお願いいたします。)
  • 治療開始時間は 9:00AM、10:30AM、2:00PM、3:30PMの1日4回です。(1回90分間の治療)
    (ただし、土曜日は午前中の2回のみ)
  • 当院外科にて診察を受けていただき治療を開始します。
  • 治療を開始し、2回目以降の治療は予約も承ります。
  • 治療についてのお問合わせは、043-227-7437(病院代表)高気圧酸素治療科までお願い致します。

どんな病気に効くの?

現在のところ、保険で治療をうけられる病気は次のとおりです。(診療報酬早見表より)【平成30年4月1日】

            
診療報酬点数と適応疾患
    高気圧酸素治療(1日につき)                                点数
    1.減圧症又は空気塞栓に対するもの                             5,000点
    2.その他のもの                                      3,000点
    注  1については、高気圧酸素治療の実施時間が5時間を超えた場合には、30分又はその端数を
       増すごとに、長時間加算として、500点を加算する。
       ただし、3,000点を限度として加算する。

    区分   疾患名(又は病態名)
    (1) 「1」は減圧症又は空気塞栓に対して、発症後1ヶ月以内に行う場合に、一連につき7回を限度として
        算定する。

    (2) 「2」は次の疾患に対して行う場合に、一連につき10回を限度として算定する。  
      ア 急性一酸化炭素中毒その他のガス中毒(間歇型を含む。)  
      イ 重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)又は頭蓋内膿瘍  
      ウ 急性末梢血管障害   
        (イ) 重症の熱傷又は凍傷   
        (ロ) 広汎挫傷又は中等度以上の血管断裂を伴う末梢血管障害   
        (ハ) コンパートメント症候群又は圧挫症候群   
      エ 脳梗塞   
      オ 重症頭部外傷後若しくは開頭術後の意識障害又は脳浮腫  
      カ 重度の低酸素脳症  
      キ 腸閉塞

    (3) 「2」は次の疾患に対して行う場合に、一連につき30回を限度として算定する。  
      ア 網膜動脈閉塞症  
      イ 突発性難聴  
      ウ 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍   
      エ 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害   
      オ 皮膚移植  
      カ 脊髄神経疾患  
      キ 骨髄炎又は放射線障害

    (4) スモンの患者に対して行う場合は、「2」により算定する。

    (5) 2絶対気圧以上の治療圧力が1時間に満たないものについては、1日につき「酸素吸入の保険点数」
       により算定する。

    (6) 高気圧酸素治療を行うに当たっては、関係学会より留意事項が示されているので、これらの事項を
       十分参考とすべきものである。  

また、現在保険給付の適応ではありませんが、研究的・経験的に有効であると判断される肝臓病、潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病など、各種の慢性あるいは難治性疾患の治療も行っています。
ただし、この場合には自費による治療となります。(保険診療を中心に行っております。)
※自費(自由診療)の場合、 【1回 10,000円(消費税別)】
※別途下記の費用がかかります。
     【初回のみ診察料 3,910円】
     【酸素マスク 680円(ご購入頂き、治療中はご自分の物としてお使い頂くマスクです。)】

更なる臨床応用

現在当院では、急性・慢性の脳血管障害、突発性難聴、腸閉塞や抗癌剤の併用される悪性腫瘍の高気圧酸素治療が多用されています。さらに高気圧酸素治療は、その臨床利用の有用性が注目され、糖尿病や高血圧の管理、副腎皮質ホルモンの刺激による老化の防止や若返りの研究など新しい適応開発の試みが進められています。
また、宇宙船外活動の場合の減圧症の研究も新しい問題として取り上げられています。当院でも、今後益々基礎的研究とその臨床応用を重ねていきます。